
主人公生田真央。開始1ページ目から担任である深町教師に恋心を抱いている描写があるものの、この設定が生かされることはなかった(爆)。ちなみに、10歳♀から見た20歳♂は格好良いけど、20歳♀から見た30歳♂はそうでもないらしく、これが30-40になると更に悪化するそうな。今20代男性の諸君は、30代40代になった時に幻滅されないよう気を付けよう(戒め)。

タイムスリップと同時にTS化(違)する主人公。転移系と思いきや憑依系だった。この作品の場合、元の人格である乱丸と共存するという形ですが、近頃よく見る異世界でゲームや小説のキャラクターになってしまう話を見ると、完全に乗っ取ってしまう場合が多く、元の人格はどうなってしまったのかと思う時がよくあります。でもそのことに触れる作品は少数なので、大多数の人は気にしないのかなとも思ってしまう今日この頃。

軍人である信長からすれば、ゲリラ攻撃を仕掛けるような輩を生かすメリットは無く、周りの家臣も同意見。乱丸の兄から気狂いを疑われ、そこで現代日本人であることを白状。無礼なことを言われまくっても、利用価値があると判断すれば許してしまうのは信長らしいところ。でもやっぱり小学生なので、簡単に現代知識無双とはいかない。

んでもって唯一披露できた現代知識が紙飛行機。これによってどうにか現代日本人であることを信じて貰えました。紙飛行機の歴史は意外に新しく、近代になってから確立したものです。これは揚力という概念がなかなか生まれず、鳥が飛べるのは自分の体重以上の推力を生み出しているからだ、という考えが長らく続いていたからでした。ジョージケイリーが鳥は羽ばたきよりも滑空している時間の方が長いことに気づき、それを元にグライダーを発明したのは19世紀になってから。更にそれを見たライト兄弟が継続飛行が可能な動力飛行機を作り、翼さえあれば自重よりも遥かに小さい推力で空を飛べるということを証明するわけです。このことをふまえると、中世人が紙飛行機を見た時の衝撃が理解できると思います。

一方飛行機造りはどうでもよく、早く元の時代に戻りたい真央と元の体に戻りたい乱丸はその原因である喋るガラケーを探す。どうやら売り飛ばされたらしい。昔は生産性が低いから教育制度が発達しておらず、いい感じに民度が低い。みんな貧乏が悪いんだ。

早速買戻しをしようとするも、他の人に先を越されてしまう。どうやら信長暗殺を手伝ってもらいたいらしい。一度は拒否するものの、条件付きで手を組むことを認めてしまう。真央的には信長にも死んでほしくないはずだから、もしこの女が殺そうとしたら全力で止める所存か。

警戒はしていたものの、あっさり無力化される真央。うーんこの。かざみと名乗るこの女は伊賀の乱の生き残りで、信長に恨みがあるらしい。でも伊賀衆って信長と和睦したよな?と思っていたら、この暗殺を防いだのも伊賀系の忍者。なかなかバランスが取れた展開ですな。

信長が現代に日本に来るのかなと思ったら、その前に自分が未来へ行くと言い出す明智光秀。歴史が変わりかねないのでお断りするも、ついてきちゃうんだよなあ。1話目の時点で薄々思っていたけど、このガラケータイムマシンポンコツでは?

そしてそんな光秀が本能寺の変を知ってしまうのは必然。グライダーの仕組みを知らない俺でも知ってる事件だもんねうんうん。未来で裏切り者扱いされているのが我慢ならず、元の世界へ戻ろうとするのも自然な流れ。史実ではどっちかってーと野心的な人間だったりしちゃうけど、この漫画はフィクションだから平和を愛する光秀が居てもいいじゃない。

忠義を示すため、現代日本で得た知識を元にグライダーを製作。信長はこれを評価し、ここで大陸進出という話が持ち上がります。この話の一次ソースは日本に存在しておらず、フロイスという外人の証言のみな与太話に近い話なのですが、信長以上に対話と調略を重んじた秀吉が朝鮮出兵を引き起こしたことを考えれば、信長も同じ選択をするんだろうなと思わなくもないというのが個人的な感想。

光秀はこれに異を唱えるも、信長の反論に何も言えない。21世紀になっても戦争はなくならないからねえ。終わらせるためには地球統一するしかねえ!この後グライダー造り役を解任されてしまうけれど、武将としての扱いは続く光秀。これが運命の分かれ道となってしまうわけですが、信長は家来が反抗した後も重用し続けるというのは史実でもやってるんですよね。良く言えば信頼している、悪く言えば許してやったんだからこれ以上の文句は言わないだろ、と己惚れているということになりましょうか。疑ってばっかじゃ人はついてこないし、人の上に立つためにはなんだかんだで器のデカさが求められます。

ここで信長殺害を決意する光秀。対話がダメなら暴力に頼るしかない。グライダーを持ち込んだ責任を感じている部分もあるのでしょう。平和主義者が暴力に頼ると貶される場合が多いけれども、主義と手段って別物なんですよね。主義を守るために手段を変えるというのは容認されるべきことで、手段を守るために主義を変えるくらいなら、主義自体を捨てた方がいいのです。

真央の再登場により余裕を取り戻す信長。よくある悪役だったらこの後約束を反故にするとこだけど、史実の信長を知っていればそんなことしないよなという安心感。このまま恭順し、戦国時代でジェット機造りするのもいいなと思う俺氏であった。

当初は悲観したものの、真央から今後の歴史を聞き自分の運命を受け入れる信長。真央のタイムスキップによって、一番救われたのは信長だったというのはなかなか深いところ。延焼で真央も死にかけるも、お喋りガラケーのハイパーモードでかざみと共に脱出。チートって便利だね。最終回で自分の先祖になるであろうかざみの無事を見届け、現代日本に帰還する真央。そして自分の母親が元に戻っているのを確認しておわり。大人になってから読んでみても面白い作品でした。
